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 同じ図となりますが,今回は,赤丸部分のことです。

 前回までいろいろと書いたのですが,「人間の視覚は視点を合わせた部分をつなぎ合わせて,光景全体を認識している。」こと,また,個々部分部分に見ているので,カメラのように,1つの露出,1つのホワイトバランスで撮影したイメージにはならないと思います。従って,人間の方がカメラよりも勝っているということになります。

 露出でいうと,逆光での人物を普通に撮ると,背後の光が強く,カメラの方が勝手に暗く写していまい,せっかくの人物が暗く写ってしまいます。そこで,そうした場合のコツとして,露出補正をプラスにして撮影すると,人物は明るく写りますが,背後にある青空も白飛びかそれに近い明るさとなってしまいます。この写真違う! と思っても,そこは肉眼とは違い機械の仕事というわけです。人間の認識では,人の顔も逆光でありながらも暗くは感じませんし,空の青さも見えるのですが,それは個々に見て認識しているからです。頭脳では,どちらもよく写っている状態なのです。

 そこで,この人間の「見た目どおり」に近づけるのが「現像ソフト」を使った現像の1つの目的になります。上記では露出のことでしたが,明るさが異なると色にも違いを及ぼします。つまり,空や大地・農地,農作物などの諸々のものの色にも違いを及ぼすものですので,露出の補正だけでだめな場合は,ホワイトバランスを変えることも重要になってきます。ところが,その現像ソフトが,全画面を一律にしか補正できないとなると,カメラと同じです。前にも書いたように,どのカメラも元となる光のデータを解析したものをもっているのですが,液晶画面で確認などをする画像は,カメラ内ですでに均一の補正を行った(つまりカメラ内現像して)ものです。

 そうなると,上記の逆光・人物の画像の現像だと,人物の部分とその背後の部分と別々に補正をしなければなりません。ここで重要なのは,使っている現像ソフトが,「部分的に範囲を指定して補正をかけられる現像ソフト」かどうかということになります。どうでしょうか。(まあ,大体が写っていればよしとすれば,それでいいのですが。)
 まさに,人間が個々を見て,明るさや色を確認したように(見たように),写真データを部分・領域ごとに現像できるソフトを使ってこそ,人間の見た目,見た目どうりになるのだと思います。

 肉眼,眼球から書き続けて,やっと1つの結論となります。カメラは人間の認識どおりには写せない。従って,部分・領域毎に補正のできる現像ソフトを使って補正しなければ,「見た目どおり」の写真には近づけない,ということになります。

 このシリーズというか,この写真考は,これから,その見た目どおりに現像することの難しさ,そもそも見た目の色をどう再現するのか,そのためにどうするのか,といった方向へといくことになるでしょうか。テーマ,モチーフなどとともに,厄介でありながらも,ステップアップには必要な考察事項だと思っています。