残照メモリーss

 夕陽の木(美瑛) 以前からもっていたイメージと何かピッタリとするものが撮れた。木の中での光条、動きある雲、樹影‥。哲学の木伐採以後から、「樹木への思い」が天にも通じたような心地で撮影させてもらった。そして、この後移動して再度戻ったときの日没後の美しく激しいような夕焼けにも出合うことができた。こんな時は、フッとありがとうとつぶやくのである。

 自然風景、田園風景はいいものです。しかし、フッと自然風景だけでいいの?と囁く声も聞くのです。それは、花でも鳥でもなく、人です。妻の願いもあって、大正生まれの一人暮らしの義母を撮ってみたいとも思っているのです。皺のある顔、そして、喜怒哀楽。既に高齢化から超高齢化を迎える中での哀愁、あるいは喜びというのも魅力的です。「限界集落」「独居老人」‥記録性も高いと思っています。いずれ私の道でもあるからですし‥、気兼ねのないところでは、田舎に住んで自分をとればいいということになるのでしょうが、それにはまだ少し‥若い?!
 そして、やはり質のことが気にかかりますし、写真が記録性を越えるものとして、記録を一歩でも越える何かを模索しながら、撮り続けるモチベーションを維持、高めたいと思っています。
 すでに3年巡った美瑛の丘。もう少し違った見方、視点から撮れないものかと言うことです。もっといいレンズで?ということも、小さな望みですが、そうした手段ではなくて、「美瑛の丘の光景」という被写体を通して、何を見つめ、考え、何を撮したいのかということです。これについては、「テーマ」とか、「主題」、「コンセプト」、「サブジェクト」と呼ばれているものについて基本的な理解をしてから、自分の考えを整理して、組み立て直さなくてはならないようです。 

 いつまで写真がとれるのかという将来的な不安もある中で、下記のような言葉にであいました。

  「One should really use the camera as though tomorrow you’d be stricken blind.
 (明日突然目が見えなくなるかもしれない、そう考えてカメラを真剣に使うべきだ。) ドロシア・ラング」

  そして、テーマやサブジェクトについても、写真家のドロシア・ラングは述べています‥。
   「Pick a theme and work it to exhaustion… the subject must be something you truly love or truly hate.  (テーマを決めたら、疲弊する極限までやってみなさい。サブジェクトは心から愛しているもの、または心から憎むものでなければならない。)

  この日本語訳では、ほとんどがサブジェクトを「主題」としているものが多いようです。辞書では、どちらも「主題」という意味もあり、訳が分からなくなります。しかし、意味で異なるものをあげると‥
 
「テーマ」:題目、根本意図、中心課題、中心的内容、本題‥
  「サブジェクト」:話題、論題、項目、対象、材料、被写体‥

 となります。写真ということからすると、サブジェクトは被写体とした方が分かりやすいかもしれません。絵画では、「モチーフ」に近い意味でしょう。また、テーマが1つの文言であるとすれば、それを伝えるための複数の要素や構想がオブジェクトということで、写真という実体、撮された被写体というのではないかもしれません。

  また、「テーマ」を検索していくと、「コンセプト」との関連についても述べられています。単に「概念」とありますが、「創造された作品や商品の全体につらぬかれた、骨格となる発想や観点」というのもあるようです。写真関係ではあまり目に触れない言葉ですが、デザイナー関係で使われるようで、「既成概念を壊すもの」「新しい価値観を創るもの」というのも含まれ、いわゆる個々の「オリジナリティーにも関わるアイディア」という点も面白いところです。写真家は写真そのもので勝負という面が多いようですが、デザイナーは、自らのデザインとともに、クライアントへの作品の主張が必然的なことから強く意識されているのだと思います。とはいえ、写真家がもっていないということではないと思いますし、特にプロとなれば、これがないと写真における自己存在、独自性が危ういということになります。 アマチュアは幅がありますので、自分の立ち位置も気になるところです。