
前回までは、「読み解き」と言うことで、写真に何が写っているのかをまずよく見ることと、次に「なぜ」を自問し、それに自ら答えると言う「自答」する「自問自答」が解釈であることを仮定しました。あくまでも、自分の写真として読み解き、次の撮影に生かすような立場です。
以下の内容は、2005年の日本写真学会誌に載った論文で、写真評価を観点別の数値評価と自由記入した文章から「評価観点」を抽出したそうです。(「写真作品の表現と評価」 矢 田 博 彦 Hirohiko YATA) 詳しくは https://www.jstage.jst.go.jp/article/photogrst1964/68/6/68_6_434/_pdf です。


多いものから順に、「表現について」が最も多く、「画像の諧調性」と「画像の鮮鋭性(シャープ性)」「画像の粒状性」、「画像の画質」が次に来るそうです。 その他は「画面の構図」、「総合的な評 価 」、「 撮影の技術について」、「現像やプリントなどの処理技術について」。さらに 「好み」、「 興味」、「その他」となるとのことです。

「総合、表現、画質、撮影技術、好み」の5項目の評価は評価者の「主観」が大きく関係する「心理的因子」群であり、,「鮮鋭性、階調性、粒状性、処理技術」の4項目の評価は写真を「客観視」して評価する「心理物理的」評価群であるとしています。

そのあたりを理解するには…?。質の良さと漠然に言っても、工業製品であれば、仕上げの滑らかさが重要でもありますが、手にして持つものとすれば、その滑らかさは肌触りがよくていいようですが、保持力にはよくないと言うことが言えそうです。ツルツルの表面よりも、光沢がないマット仕上げの方がいいと言うこともあります。モノクロ画質の粒状性についても、客観的に粒子の大きさがわかりますが、どの程度が好みなのかは人それぞれでもあるし、作品の内容も関係するかもしれません。カラー写真だと、「荒れ」ていると判断するかもしれません。要は客観的に見えるものも、心理的主観的にはどう受け止めるかと言う点、「画質」と言うものが主観的な写真の良さを決める比重が大きいかもしれないと言うことです。いわば、工業製品よりも手作り品の不完全さや誤差、歪みなどが「味がある。趣向がある」として受け入れられるのと似ているようです。
