
「台湾」というと、東日本大震災でのことが印象的です。義援金の金額も253億円という話はとどいていますが、台湾の仏教系慈善団体の日本支部の方々が、被災した各地におもむき総量数十トンもの炊き出しを続けたことや、被災住民に直接現金を渡していたことです。1世帯当たり5~7万円、一人暮らしでにも2万円、配布場所に来られない人には直接訪問して現金を手渡ししたそうです。さらには被災者1000人を無料で台湾に招いたとか、欧米が放射能で渡航を制限していた際に最初に訪れたのが台湾人だそうです。
これを知ると、「犬去りて、豚来る」の前回の「日本人の猛烈な弾圧」というのが本当に事実なのかと疑ってしまいますが、抗日・反日運動が盛んであり、死亡者も多くいたのは事実です。しかし、古い中国風の城壁に囲まれた小さな町が点在するような台湾に、鉄道や道路網をつくり、城壁を取り壊して、産業をおこしていったのも事実です。強引ながらも豊かな島にしなければならなかったのも事実です。

いまでも日本統治下での建造物が保存、修復されているようですし、ダム建造と灌漑用水路づくりに努めた技師の意味深い銅像も残っているそうです。いわゆる建造後に建てられたのですが、国民党統治下の際には密かに隠されていて、80年代に再び設置されたそうです。しかし、親中派の活動家によって首を切断されたのですが、3週間で修復して慰霊祭に間に合わせたといいます。このダムと総延長1万6千キロにも渡る灌漑用水路づくりには10年以上もかかったと言います。この人物はその後フィリピンの灌漑用水路調査のために向かう途中に米軍潜水艦の攻撃で死亡します。さらに台湾にいた妻は、1945年敗戦確定後に、夫のつくったダムの放水口に投身自殺をはかります。その銅像の後ろに夫婦の墓もたてられ、記念館もあり、2021年には記念公園ができ、当時の住宅まで再現されているそうです。そして、このダムを造った日本人は台湾の教科書にも載っているそうです。

いわゆる「改革開放」の鄧・江・胡までの39数年間で、民主主義の国として、アジアではもっとも高位(英国誌エコノミストで2021年での民主主義指数報告)。「世界幸福度報告書2018」でもアジアではトップとなる豊かな国となっています。「国」という言い方をしているのですが、1971年に国連が、中華民国から中華人民共和国を中国の代表としたために、正式な国としては認められなくなった経緯があります。これも、実はそれまで中華民国を認めていたのが、ソ連との冷戦下にアメリカが中心になって、中華人民共和国をソ連との対抗勢力に加えようとして、急接近したことから、中華民国を切り離したという経緯があります(これも大国のエゴ)。しかしながら、非公式ではあっても経済的な交流は保たれるという関係にあって、日本よりも民主的な国という位置づけが海外からの評価となっています。そうしたこともあり、台湾アイデンティティーというものが、広く染み込んでいったようです。


台湾は隣国の一方的で武力を辞さないという姿勢には、アメリカの力も借りながら軍備増強をしています。このウクライナ侵攻中でも、アメリカの非公式な代表団(元軍人で参謀本部議長)が3/1に訪問しています。おそらく軍事支援の綿密な連絡調整を行ったのでしょう。武器支援、物資支援、インテリジェンス支援などなどです。また、台湾側は「確固とした自衛の決意をもっていると全世界に告げたい」と告げています。

このウクライナ侵攻があるまでは、アメリカの軍関係者も台湾侵攻の確率は低いと見ていたようですが、ロシアによる侵攻が現実化したことによって、中国の侵攻の可能性が高まったと判断しているようです。ウクライナ侵攻についても可能性は低いとみていたようですが、実際に侵攻があって認識を変えたようです。理屈ではありえないことが起こったからです。経済制裁も交渉も、開戦には役には立たないということです。隣国は、あの北京オリンピックでロシア大統領と何を話したのでしょう。台湾侵攻への各国の対応、反応をみるために、隣国はロシアを実にうまくそそのかしたのでしょうか。あの非難決議での棄権は、あきらかにロシアへの肩入れです。ロシアからの武器支援依頼があったことを、米国誌がリークしましたが、米政府も釘をさしたようです。国際世論からすると、武器援助を表立ってはできないといってはいても、隣国がどうでるかは不透明です。人道的支援という名の下に何かをおくるでしょう。ロシアと国境紛争を起こしてきた経緯や石油・天然ガス輸入では、ロシア崩壊後を見据えても、何らかの支援をしておくのが得策ですからね。